被災地支援ボランティアに参加した

11月18日から20日にかけて、JTBの「東北ボランティアサポートバスプラン」というツアーに参加した。活動場所は岩手県陸前高田市。活動の拠点となったのは陸前高田市災害ボランティアセンター

陸前高田災害ボランティアセンターの様子

最初からこう言ってはなんだが、この記事を書くに当たって特に目的があるわけではない。現地での体験を報道したい訳ではないし、あわよくば読んでくださった方にボランティアに参加してもらいたい、なんて尊大なことは全く考えていない。ただ、自分の体験を文章にして公開したい、それだけだ。

ツアーに参加するきっかけ

TVニュースによる報道や、友人である柴田さんのブログ記事を見て、自分もこの目で被災地を見てこなければならない、という想いを持ったため。

なぜこのタイミングなのか

被災地をこの目で見たいという想いを持っていながら、なかなか行動に移すことはなかった。しかしとあるきっかけで決断に至る。そのきっかけの一つはスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式での有名なスピーチにおける

“If you live each day as if it was your last, someday you’ll most certainly be right.”(邦訳:「毎日を人生最後の日だと思って生きてみなさい。そうすればいつかあなたが正しいとわかるはずです。」)

という言葉にインスピレーションを受けたことにある。このスピーチの動画(邦訳字幕付き)を観たきっかけは、彼の死によってネット上に溢れた情報の一つだったから。本当にしたいと思っていることをなりふり構わず実行するという信念を、僕はジョブズの言葉から感じ取った。 (彼の自伝を今読んでいる。丁度「Ⅰ」が読み終わったところだ。)

しかしあくまでこのエピソードはきっかけの一つに過ぎない、ということを重ねて書いておく。

参加にあたっての準備

助け合いジャパンのサイトを見てボランティアへの参加の仕方を知る。個人で参加するにはツアーがお手軽だ。スケジュールやツアーの内容からJTBが行っているボランティアバスツアーに参加することを選択。 活動に必要な所持品について、JTBから詳細な案内をメールでもらうが、自宅にないものがたくさん含まれていた。例えば

  • インソール入り長靴
  • 厚手のゴム手袋
  • 防塵マスク
  • 防塵ゴーグル

などは日常生活で使う機会もないし、どこにいけば売っているのかさえ知らなかった。ホームセンターなどで売っていることは分かったが、同時に都心には驚くほどホームセンターや作業用具店(ワークマンなど)がないということが分かる。東急ハンズに行けばなんとかなるのでは、と行ってみるも、東急ハンズには身につけるものはほとんど売っていないということに気づかされることとなった。 実家や知り合いを当たってみるも、思わしい結果を得られず、結局楽天市場から通販で購入することにした。購入に際して店からサイズからいろいろと悩むも、1週間ほどで全ての装備を取り寄せることに成功。これで準備は整った。

現地へ

記録が曖昧なところはあるが、スケジュールと活動内容は大体以下のような感じだった。

11/18(金)

  • 22:30 丸の内鍛冶橋駐車場に集合
  • 23:00 出発。ツアーバスは高速をひた走る。途中、SAで休憩を2回。道の駅での休憩を1回挟む。移動中に朝食を済ませる。 夜行バスで寝るのは至難の技。ツアー案内に「エアー枕、耳栓、アイマスクがおすすめ」とあったため、100円ショップでエラー枕のみ購入。(騒がしいところで寝るのは得意なので耳栓は必要なかった)しかしこのエアー枕、「ないよりマシ」程度にしか効果がない。首がかなり痛くなった。また、段差などによる車体の揺れで何度も目が覚めてしまい、熟睡することは全くできなかった。

11/19(土)

  • 8:00 陸前高田市災害ボランティアセンター着。ボランティアセンターとはいっても、砂利敷きの広い空き地に祖末なプレハブ小屋が4〜5戸建てられただけのものであり、それを見て「ここは被災地なのだ」と改めて実感し、緊張感が増した。(記事冒頭の写真がその様子)
  • 8:20 ボランティアセンター朝のミーティングが行われる
  • 8:45 ボテンティアセンター発。バス移動で活動地へ。
  • 9:20 活動地は陸前高田市今泉地区。依頼者の説明を聞く
  • 9:45 活動開始。僕の担当は空き地(元宅地?)の草刈り。ひたすら、草を刈る。中腰、またはしゃがんで行う作業のため、足腰がかなり痛んだ。
  • 12:00 昼休憩。バスに戻り、昼食を取る
  • 13:00 活動再開。ひたすら草を刈る
  • 14:20 活動終了。依頼者が現地を案内してくれるという。バスに乗り込み、市内見学へ。
  • 15:30 ボランティアセンターに帰還。センタースタッフが消毒用アルコール、うがい薬を用意し参加者を手厚く迎えてくれる。ホットドリンクも振る舞ってくれた。ボランティアセンターには、資材を洗ったり手洗いうがいができる洗い場が用意されており、しかもお湯が出るようになっていた。ありがたいことである。この後、ボランティアセンターを後にし、宮城県気仙沼市にある宿へ
  • 17:00 宿着。部屋割は、同性3人部屋。風呂に入って汗を流す
  • 18:30 食堂にて夕食
  • 19:30 自由時間(TVで日本シリーズ見て過ごした)
  • 22:00 就寝

11/20(日)

  • 5:45 起床。朝風呂に入る
  • 6:30 食堂にて朝食
  • 7:30 ツアーバスに集合
  • 8:10 陸前高田市災害ボランティアセンター着
  • 8:20 昨日同様、朝のミーティングが行われる
  • 8:45 ボランティアセンター発。バス移動で活動地へ。
  • 10:00 活動地は陸前高田市広田半島。元海水浴場があった付近だったようだが見る影もない。その近くの元宅地(現在では更地)にて瓦礫さらいをやる。僕は鋤(すき)でひたすらに土を掘ってはガラス片などをさらう。慣れない作業に、腰が悲鳴をあげる。しかし二日目となると参加者同士のコミュニケーションもスムーズなものとなっており、和やかな雰囲気の中で活動ができた。
  • 11:20 活動終了
  • 12:00 ボランティアセンターに帰還。再びスタッフに手厚い歓迎を受ける。
  • 12:30 ボランティアセンター発。
  • 14:10 岩手県一関市の入浴施設&AEONにて自由時間。露天風呂に浸かって疲れを癒す(とはいえ昨日から3回目の入浴だが)
  • 15:20 一関市発。東京への帰路へ。途中SAでの休憩を2回挟む。
  • 21:50 東京駅前着

参加して感じたこと

景観

まずは何と言っても陸前高田市海岸部の景観の凄まじさ。TVなどの映像で、もしくはネットを通じて写真でこの景観を見た人もたくさんいると思うが、それが現実のものとして目の前に広がっているのだ。主立ったコンクリートの建物以外、全てが津波によって無くなっていた。街が根こそぎ消えてしまった、という印象さえ受けた。そして更地にはうずたかく積まれた瓦礫の山。(きっと半年程前に来ていたらまだ瓦礫が散乱しており、このように片付けられた状態ではなかったと思う) 人間社会というものは地球のほんの一つの側面に過ぎない、ということを改めて思い知らされた。 (被災地の様子を写真や動画で知りたいならYahoo!JAPANの東日本大震災 写真保存プロジェクトやGoogleの未来へのキオクを見るとよい)

一日目に活動した今泉地区はこの一部であるのだが、日中は終止、静けさの中で重機の動作する音が鳴り響いており、異様な雰囲気を醸し出していた。このような大地と海に雲間から陽光が指す様子は、神々しくさえ思えた。このインパクトは一生忘れることはないと思う。

現地の人々

少なくとも僕が出会った現地の人々は、この地の現状を受け入れ、前向きに復興に向かって歩いていた。 これは去年、僕の母方の祖母が亡くなった際に母が見せた態度を想起させた。母は葬儀で涙を見せはしたものの、実母の死というものを素直に受け入れていたと思う。彼女は次の日に変わらぬ振る舞いを見せていたのだった。 逆境に対して人がどう考え、行動するのかというテーマについて肌で感じることができた。

まとめ

復興支援活動には人力で行うには限界のある仕事もたくさんある。20人程の団体で一日ボランティア活動をして「これだけしかできないのか」という感想を持った。 ツアーの添乗員さんはこう言っていた。「この活動に効率は求めない。決して無理はしないでください。ボランティアの皆さんが復興支援に行くこと自体が、被災地の人々を勇気付けることになります。」

参加者は老若男女問わず様々な人がいた。学生さんから、定年退職後のお父さんまで。一人一人が震災に対しての問題意識を抱えており、自分にできることは何かを考え、ツアーに参加していた。中には何度も被災地に足を運んでいる人もいた。「まだまだたくさんやることがある」という意識からだという。

自分は、というとまた被災地に足を運ぶかどうか、今のところは分からない。感じたのは、現地で手を動かすよりも、もっとよく社会に貢献できる方法が僕にはありそうだ、ということ。

ボランティア活動でできることは、微々たるものかもしれない。しかしほんの少しでも前に進んで行くことが、復興に向けた一番の近道であること、これを被災者も支援を行う側も、きっと分かっているのだ。

前に進まなければ何も変わらない。

この言葉をもってこの記事の結びとさせていただきたい。

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